アンティークの懐中時計とは

懐中時計は、本来洋服のポケットに忍ばせて使う時計です。このため、英語ではポケットウォッチ(Pocket Watch)と呼ばれています。腕時計はそのベルトにより腕に装着しますが、懐中時計はそれ以外の方法で身につけ、落下を防止するためにチェーンや紐をつけたりします。女性用のネックレスにつけるペンダント型やブローチにつけるタイプまでを含めて懐中時計と呼んだりしています。

アンティークとは、厳密には製造後100年以上経過した物をさしますが、時計の世界では第二次大戦前であればアンティークと呼ばれるケースが多いようです。腕時計は第一次大戦ごろに誕生し、1900-1930年が懐中時計の黄金時代なのですが、一般的にこの時代がアンティークと呼ばれているようです。

懐中時計から腕時計へと移行していったきっかけというのは、やはり第一次世界大戦です。それまでは腕にブレスレットのような感覚で時計を身に付けるなんて考えもしていなかったようです。男性の間では、“腕に時計を身につけるなどということは女々しい”というイメージがあったなどとも言われています。戦争では実用性や機能性といったものが最優先されることから腕時計が生まれることになったのです。

懐中時計が一般に普及した1900年前後、もしくはそれ以前の懐中時計、腕時計の初期で黎明期の腕時計が楽しめる1920年代、そして腕時計の全盛期ともいえる1940年代、大量生産時代に入りクォーツや電池式時計にその座を明け渡すまでの1960年代。そんな年代の分け方になるかと思います。

当時の懐中時計は機械式時計であり、桁の違う大量生産が行われる時代より前に作られた時計こそが、アンティークと呼ばれるに相応しい作りを持っています。

デジタル時計に慣れていると、時計に誤差が出るということ自体が有り得ないことですよね?時計の歴史を紐解くと、それこそ古くは「いかに精度を出すのか・誤差の無い時計を作るのか」という点に焦点が置かれた、技術開発の歴史でした。各時計メーカーが各々で工夫した機械を作り、特殊な機構を作り出し、より信頼性の高い機械・時計を開発し製作していたのです。
それがいつしか機械としての作りは完成を迎え、より壊れにくい作りと機構を生み出し、さらには莫大な数を作りだす超大量生産時代へと移り変わっていきました。
1960年代頃から、自社で機械を作ることをやめるメーカーが増え、メーカーが異なり、ケースや文字盤などの外観こそ違うものの、中の機械は同じという時代へ移り変わっていきました。
時計がクォーツやデジタルといった電池式の時代へ移行したことも大きな引き金となり、その流れは大きく加速されていきました。

現代の時計が、どの時計も同じように見えてしまうのは、このように外側こそ違えど中身は同じ機械を使っていたり、売れるデザインのものを「大量に作れる形にして作る」という大量生産という弊害によっておこされているものだからです。

確かに時代が進めば、初期のクォーツなど電池で動く時計はもちろん、現在使用しているデジタル時計さえ、アンティークと呼ぶに相応しい時代が訪れるかもしれません。
しかしながら、クォーツやデジタル時計は携帯電話やゲーム機などと同じで、電子基板や回路が障害となり、機械式時計のように数十年、果ては100年といった期間を正常に動かすということはほぼ不可能です。こうしたことから、1960年代以前に作られた機械式時計をアンティーク時計と呼んでいる人もいます。