あなたが懐中時計にチェーンを付けておくべき7つのワケ


『懐中時計にチェーンは必要ですか?』

懐中時計を持ってみたいというお客様から、この質問を良く受けます。
『懐中時計にチェーンは必要ですか?』と。あなたはどう思いますか?

ちょっとレトロな懐中時計。美しいアンティーク懐中時計。
僕は、新品・レトロを問わず、懐中時計の持ち歩きにはチェーンの併用をお奨めしています。

何となく分かっちゃいるけれど、でも何故チェーンなの?紐ではいけないの?
そんな皆さまの素朴な疑問に僕なりの考え方を纏めてみました。

懐中時計を持ってみようかな?という方、使い方、つけ方を知りたいという方向けに内容を纏めましたが、すでに何個かコレクションをしていらっしゃる方にも参考になる部分はあると思います。

読み物感覚で、お読み頂けると幸いです。

あなたが懐中時計にチェーンを付けておくべき7つのワケ

僕は、これまで懐中時計を扱ってきた経験から、チェーンも併用することを推奨します。
今回は、7つの理由にまとめてみました。


★理由その1:傷、破損を防止するため


一番の理由はこれでしょう。懐中時計にとって、チェーンとは、いわば命綱のようなものです。

懐中時計は、時計が進化する過程で、ポータブルとして持ち運びができるようになった画期的な進化を遂げた時計ですが、Gショックではありません(笑)。また、ダイバーズウォッチでもありません。

高いところから落とせば、ガラスは一発で割れてしまいますし、陶製の文字盤やエナメルの文字盤はヒビが入ってしまうかも知れません。

実は、これまで懐中時計を落としてガラスを割ってしまった、時計が動かなくなってしまった!というお問い合わせを何件か頂いています。

一番気の毒なお客様は、届いた当日に嬉しさのあまり持ち歩いていたら、手が滑ってガラス面をぶつけて風防を割ってしまったという方もいらっしゃいます。

…届いた当日ですよ。その方のお気持ちを察すると本当に気の毒だなと思います。
これを既(すんで)のところで防止するグッズ、それがチェーンです。

”チェーンを付けていたお陰で、間一髪セーフでした。” こういうお客様も実に多いのです。



★理由その2:ファッション・コーディネートのため


あなたは、普段仕事をするとき、スーツを着て仕事をしていますか?
もしそうなら、スーツのスラックス下に、白いスニーカーを履いたりしないでしょう。
反対に、素足で出掛けたりしませんよね?(笑)

懐中時計にも、オープンフェイス、ハンターケース、アールデコ、スケルトン、鉄道懐中時計等々、様々な種類が存在し、用途によって使い分けられていたハズです。

つまり、懐中時計の扱いにもTPOが当然存在します。
当時の鉄道マンが、装飾のキラキラしたエナメルの小型ハンターケースを持っていたら、やはりちょっと場違いな印象を受けると思います。やはりそこは鉄道懐中時計を持つのが当たり前でした。

懐中時計にTPOがあった、ということは、”決まり” ではないけれど、やはりオーソドックスなスタイルがそこには存在します。文化として、懐中時計はチェーンを付けて使うのが一般的でした。
ファッションスタイルに合わせて、様々な形のチェーンを使い分けていたのですね。

それに、懐中時計のチェーンにはドロップ付やダブルチェーンなど、華やかなものも多いです。
これも、コーディネートとしてチェーンの使用が一般的であったことの表れと考えて良いと思います。


★理由その3:画になるから

クラシックカーのダッシュボードにレイバンのサングラス。
一緒に飾っておくと画になるモノがあります。万年筆と手帳やクラシックカメラ。

現代のビジネスマンなら、ノートパソコンにスマートフォンでしょうか(笑)。

懐中時計だって、単体でポツンと置いてあるよりも、チェーンと組み合わせた方がやはり華やかです。

長い間人々から親しまれてきた懐中時計は、チェーンと組み合わせて使うのが当たり前でした。
そこには芸術的な域にまで高められた美しさがあります。

例えば、見事な食器だって、器単体の美しさよりも、中に美味しそうな料理を品良く盛り付けることで、料理も器も映えるというものです。

懐中時計だって、単体で扱うよりも、チェーンと一緒にさり気なく置いておくだけでも、”らしさ” が増して、魅力的に映ります。

せっかく懐中時計に魅せられたのだから、魅せることには拘りたいもの。
チェーンは懐中時計を魅力的に映す名アシスタントなのです。


★理由その4:話のネタとして

あなたは話題豊富で饒舌な方でしょうか?もちろん、それなら大いに結構。私はあなたが羨ましい(笑)。

しかし、多くの生真面目な日本人男性にとって、ビジネスや社交場、或いは女性をデートに誘うというとき、いつでも話題豊富で話のネタには困らないものでしょうか?

僕はそうは思いません。

案外、話下手で、何から話していいのか、寡黙になってしまう方も多いのではないでしょうか。

話題を提供しようと、自慢の懐中時計を懐から取り出してしまうのでは、大人げがないというもの。

それでは、あからさまに懐中時計を自慢するために懐から取り出したようにしか見えません。

一般に、人は、単なる自慢話を嫌います。でも、魅力的で面白いハナシには興味を持っています。

もし、胸元からさり気なくチェーンが覗いていたらどうでしょうか。
あるいは、そのチェーンに素敵なフォブが下がっていたとしたら・・・。

たかが一本のチェーンであっても、話のきっかけ作りには十分なのです。
そこから、さり気なく懐中時計の話題にも触れられるでしょう。

チェーンがあるから、自然と話題が出て、そこから、あなたの趣味の良さや懐中時計を嗜む人柄というものが伝わります。


★理由その5:懐中時計をフォーマルに使うため


人生には、”ここぞ!” という場面が必ずあるものです。
結婚式や、パーティーなど、ちょっと今日はお洒落に自分を演出する場面。

伝統的なタキシードや3ピースのカッチリとしたスーツなら懐中時計との相性は抜群です。
しかし、どんなに立派な懐中時計を持っていても、やはりチェーンが無ければその魅力は殆ど誰にも伝わりません。

だからと言って、いちいちポケットから懐中時計を取り出して他者にアピールしますか?
それでは前述の自慢話と同じです。一方的な自慢話など、誰も聞きたいとは思いません。

懐中時計はあなたを惹き立てるモノであって、懐中時計そのものの自慢話を始めてはならないのです。

しかしこれも、チェーンがあればどうでしょうか。
スーツの内側にキラリと光るチェーンがあれば、それだけで華やかな印象となります。

フォーマルな衣装で、胸元からチェーンが下がっていてもおかしいということはありません。
そのチェーンを見て、懐中時計を使っているのかな?と相手には自然に伝わります。

懐中時計を目にする場面は滅多にないでしょうから、お洒落に配慮しつつ、会話も弾むというものです。


★理由その6:ボウがあるから

何を当たり前のことを言っているんだ?!と思うかも知れませんね。
そうです、当たり前のことを言っています(笑)。

懐中時計にはボウがある。だから、チェーンを付けるべきです。
そんなことあるか!と思うのなら、腕時計をちょっと考えてみて下さい。

腕時計には、一般的にケースにラグがあり、革バンドないし、金属バンドを付けて使います。
腕時計のケースにバンドを付けずに使う方を僕は殆ど知りません。

或いは壁掛け時計を考えてみて下さい。
壁掛け時計の背面には、必ず壁に引っ掛けておくための溝があります。
この溝にネジやクギの頭を引っ掛けて壁から下げているハズです。

懐中時計のボウだって、全く同じ理由で付いています。

懐中時計は英語でPocket Watch。つまり、懐やポケットに入れて使うものです。
しかし、ポケットから取り出す時、しまう時にうっかり手を滑らせて落としてしまうかも知れません。
そうならないように、ボウが付いています。

懐中時計のボウにはチェーンを付けて使う。
これが、あるべき懐中時計の扱い方であり、懐中時計メーカーからのメッセージなのです。


★理由その7:1点モノだから


当店が販売している、アンティークやビンテージと呼ばれる懐中時計。
それは、何十年、時には100年を超えて受け継がれてきた逸品です。

長い時間を経て、何人かのオーナーの手を渡って、あなたの元へ届いた物です。

同じ年代、同じメーカー、同じグレード、同じシリーズの懐中時計であっても、ケースのデザインが違うとか、針や文字盤が違うとか、ケースの素材が違ったり、モデルチェンジで僅かにムーブメントの意匠が変わったり…。

二つと同じものが無い。それがアンティーク懐中時計の持つ魅力であり、稀少性と言えます。

だからこそ、懐中時計は大切に扱っていただきたい。
その時計は、あなた一人の代で潰えてしまうものではなく、子や孫に受け継がれるかも知れない。
或いは、いつの日か、第三者に譲る時が来るかも知れません。

しかし、もうこれだけのクォリティを誇る懐中時計を今のように簡単に入手できる時代はこの先訪れないでしょう。

後にも先にも、この20世紀前半くらいまでの美しい懐中時計を手軽にコレクションするには、インターネットや流通が発達した今が一番良い時期だと思います。

この先、間違いなく、良品と呼ばれるものは数が減って行く一方です。
いつか買えなくなってしまう日が必ず訪れます。

もちろん、どんなに大切に扱っていても、いつか壊れる日は訪れます。
『形あるものいつかは壊れる』というくらいですから…。

しかし、チェーンという手軽な相棒を与えることで、そのリスクを大きく減らすことは可能です。

この魅力ある懐中時計を楽しめる日が1日でも長く続くように。
是非、そういう思いで懐中時計にはチェーンを付けるものと考えてみて下さい。


★番外編:紐ではダメですか?

お客様から、たまにこのような質問を受けます。

『貴店では、懐中時計に付ける紐は販売していないのですか?』と。
残念ながら、当店では紐の販売は行っていません。
腕時計の革バンドを製造しているバンビなどから、こうした紐は販売されています。
インターネットで容易にお求め頂けると思います。

問題は、なぜ当店が販売しないか?ということでしょうか(笑)。

突き詰めると、これは僕のポリシーです。
つまり、僕は【ごった煮】が好きではないのです。

当店が扱う懐中時計は、アメリカを中心に、イギリス、スイス製のものです。
これらは欧米で発達してきました。

19セイコーなど、国産の懐中時計には紐が似合うものも存在しますが、やはり郷に入れば郷に従うもの。
西洋の懐中時計にはチェーンだと思いませんか?

それは、ハンバーガーにわさび醤油を付けて食べないのと同じこと。
極上のお寿司に熱々のとろけるチーズを乗せてデミグラスソースをかけますか?

僕は、西洋で発達した懐中時計には、やはりチェーンが一番似合うと思っています。
だから紐は取り扱っていないのです。

チェーンを嫌う方は、チェーンのフックと懐中時計のボウが擦れて傷がついてしまうから。
そのため、当店が販売するチェーンには、オリジナルのレザーループを付けています。
これは、当店でしか入手ができない特別なものです。

紐が欲しいな~と思って、このページを覗いてしまった方も、TPOを意識して、懐中時計にチェーンという選択肢も是非持ってみてはどうかと店長は思います。


まとめ

いかがでしょうか?

たかがチェーン。されどチェーン。
重ねて申し上げたいのは、壊れてしまってからでは遅いということ。
例えば、ガラス一枚を取っても、完全に同じものは手に入らないのです。
中には、チェーンを付けていたお陰で、間一髪全壊を免れたという方もいらっしゃいます。

今回はチェーンの種類ではなく、使い方に注目してチェーンの必要性を当店なりの視点で解説させて頂きました。

これまでチェーンを使って来なかった方、組み紐を使おうかと思案中の方に、少しでも参考になる部分が幸いです。


★次のコラム:アンティーク懐中時計を買うときに考えておくべき一番大切なこと