腕時計が懐中時計と兼用だった時代のこと

懐中時計兼用の腕時計

一つのムーブメントでケースだけを替えて懐中時計にも腕時計にも使えるように作られていたのと同じころ、一つの時計が懐中時計としても腕時計としても使える工夫がありました。言葉は似ていますが形はまるで違っています。

アメリカのエルジンがつくったしたのような時計がその一つです。

ELGIN 14K 15J 懐中時計兼腕時計

14K、15石入りで竜頭巻き。シリアルナンバーは21691048。

ELGIN 14K 15J 懐中時計兼腕時計

1919年製で細かな彫りがケースいっぱいにある婦人用の懐中時計です。

ELGIN 14K 15J 懐中時計兼腕時計

懐中時計なのですが、竜頭の反対側つまり6時の外側に小さなベルト掛けの穴があって、竜頭のボウ(環)とリボンで結べば腕時計になるのです。このような、懐中時計にも腕時計にも使える兼用型の時計でした。

世界の大時計会社であるエルジンでさえ1919年には兼用型を作っていたのですから、精工舎が1923年になってもなお、腕時計と懐中時計の転用版の時計を考えていたというのも無理はありません。
精工舎が初めて腕時計を作ったのが1913年のことだといいます。それは、懐中時計用のムーブメントを腕時計のケースに入れたものでした。最初に腕時計を売ってみて、あまり売れそうになければ、元の懐中時計ケースに戻して売ろういうことだったのでしょう。それほどその当時、腕時計の将来に不安があったということなのかもしれません。

懐中時計を腕時計に変える方法

懐中時計の時代は長かったので、なかなか人々は新しく出現した腕時計になじめなかったといいます。また、この頃の腕時計には全く人気が無かったと言われています。
懐中時計の使われ方に比べ、腕を前後左右上下と動かす腕時計の仕様状況は過酷で、寿命が数年しか持たなかったこともあり、評価が低かったこともあります。

そして、ボーア戦争(1899~1902年)や第一次世界大戦(1914~1918年)に参加した若者たちは、戦場で腕時計の便利さを経験するのです。しかし、市民性刈るに戻り平穏な日常生活にひたると、やはり腕時計は紳士らしくない持ち物として身につけなかったようです。

紳士の腕時計

時代がかわって、日常生活のあわただしさが増してくると、紳士の身だしなみよりも腕時計の便利さがよみがえってきました。そんな人の、そんな時のために、小型の懐中時計を皮のケースに入れて、腕時計として使う工夫が現れました。

腕時計化した懐中時計

上の写真は、時計の直径が3.5cmほどの小型用のものです。中には5.0cmくらいの大型に近い時計を入れるケースもあります。うっとうしくないかと気になる人は、今の軽くて小さい腕時計に慣れているからだと思います。当時は直径が4.5cmから5.0cmくらいの懐中時計は、ごく普通でしたので、誰も大型の腕時計を怪しむことはありませんでした。