ダボ押しの懐中時計とは?

小さな突起のついたダボ押し懐中時計

古い懐中時計の中には、竜頭の右側か左側に、カニ目とかダボと呼ばれる小さな突起のついたものがあります。
海外では、ピンセットとか、ネイルセットなどと呼ばれているそうです。爪で押さないと押し込めないものも結構あるので、ネイル
セットというそうのだそうです。なので、カニ目に爪を入れて、小さな突起を押し下げて竜頭を回さないと針は動きません。
新しい時計しか扱わない時計屋さんの中には、こういう形式の時計を見たことがないため、竜頭を無理に引っ張って引き抜いてしまい人もいます。

ダボ押し 懐中時計

同じように、そのころの時計には蓋がねじ込み(スクリュー・バック)になっているものがあります。それを知らないで無理にこじ開けて傷だらけにしてしまう人もいます。

ダボ押しは、1900年前後のせいぜい20年間ぐらいに見られる形式で、数もそう多くありません。古い懐中時計に興味ある人にとっては、時代区分をするのに大変便利です。ほぼ20年間のダボ押し懐中時計を基準にして、それ以前が鍵巻き、ダボ押しの後が竜頭巻きという交通整理ができるからです。

懐中時計 ダボ押し

ダボ押しと同じころ、同じ原理のものにレバーセットあるいは「剣引き剣まわし」という時刻合わせの方式もあります。表蓋を開けると、竜頭の右か左側に、小さなテコ(剣)があり、それを引き出して回すと剣(針)が動きます。蓋を閉めるのには、まずはテコを下げてから戻します。そうしないと蓋は閉まらないようにできています。

このレバーセットの形式を使った代表的な懐中時計としては、明治や大正のころのアメリカの鉄道懐中時計があてはまります。

剣引き式懐中時計(レバー・セット)

使い勝手を考えるなら、竜頭巻きによるステムセットのほうが勝るかと思います。鉄道懐中時計の場合には、わざわざベゼルを外して、上の写真に写っている小さなレバーを引き出す必要があるからです。
時刻合わせの方式は、ダボ押しを経て、ステムセットに移行するわけですが、ステムセットの時代になっても、鉄道懐中時計はレバーセットのままです。これは、米国の鉄道懐中時計の仕様で、レバーセットが必須要件であると規定されているためです。

このような仕様が必須用件であるのは、誤操作を防ぐためであろうと推測されます。
ステムセットは便利な反面その取り扱いに少し問題があったからかもしれません。
ステムを引く硬さが、時計の個体によってまちまちなのです。
ステムが非常に固く、力を思い切りいれたら、抜けてしまうのではと思うくらい、力を入れて引くものもあれば、ゼンマイを捲く動作をしているだけで、簡単に引けてしまうものもあります。

鉄道懐中時計は、その個体の精度が絶対視されていたので、このような誤操作は絶対に許されないのです。
よって、個体差によって誤操作を招くかも知れないステムセットは敬遠されたものと思われます。