シンプルな古いタイプの鍵巻き時計

ダボ押し懐中時計より古い鍵巻き式懐中時計

ダボ押しは、1900年前後の20年間ぐらいに見られる形式で、数もそう多くなく、このほぼ20年間のダボ押し懐中時計を基準にして、それ以前が鍵巻き、ダボ押しの後が竜頭巻きの時代となります。

ダボ押しの懐中時計をずいぶん不便だなあと感じる人は多いと思いますが、ダボ押しのような工夫ができる前は、もっと面倒な仕掛けになっていました。それが鍵巻き式の懐中時計です。

鍵巻き式 懐中時計

機械式の柱時計はゼンマイを巻くのに鍵が必要です。鍵巻きの懐中時計は、それと同じで、主ぜんまいの巻上げに小さなカギを使って巻く方式の懐中時計です。1890年ごろまでの懐中時計は、文字盤または中蓋に鍵穴があって、小さな鍵が別に用意されていました。

ステムワインド(リューズ巻き)が一般化したのは、20世紀の初頭に入ってからですので、それより前の懐中時計や柱時計と呼ばれる時計は、時計自体にぜんまいを巻く機構を持っておらず、外付けの鍵を使って巻き上げる方式が一般的でした。

そのころの時代、幕末の坂本竜馬や土方歳三の写真や、当時の外国映画を見ると、時計の鎖から小さな鍵がぶら下がっていました。これは鍵巻き式の懐中時計だった証拠でもあります。

ダボ押しや竜頭巻きの懐中時計ならば、そこにメダルやロケットがついていたり、何もついていないくさりになっているはずです。鎖を見ただけで時代がわかるのです。

鍵巻き式懐中時計と鎖

鍵巻き式懐中時計の構造

今から200~300年前の懐中時計は、たいていペア・ケースといってケースが二重になっています。おそらく、時計本体の保護と装飾のためであるといわれています。もう一つの特徴は、フュージー(円錐滑車)とくさり引き(チェーン引き)といわれる装置のついたものが多いということです。

フュージー 鎖引き 鍵巻き式懐中時計

ゼンマイを捲いた懐中時計は、エネルギーが大きく針が早く進みます。しかし、ゼンマイがほどけるにつれて力が弱くなり歩度が遅れてきます。機械式の掛け時計もそうですが、一週間巻き時計といってもはじめの一日目、二日目に比べて、六日目、七日目となると張りは遅れ気味になります。懐中時計も同じです。

鍵捲き式の柱時計

それを防ぐために、蚊取り線香を引き伸ばしたような円錐形の筒(均力車)と香箱(ゼンマイの入っている箱)との間にチェーンをかけています。ゼンマイがほどけるにつれて、チェーンは細い部分から筒の太い部分に移り、ゼンマイの力が弱まるのをカバーするのです。

このころの時代、18世紀までの脱進機はクラウン式と呼ばれ、王冠のような形をした脱進機が垂直におかれていて、テンプ輪に結びついています。19世紀になると、イギリスではイングリッシュ・レバー式にかわり、ヨーロッパ大陸ではシリンダー式に移ります。

古い時代の懐中時計には、ペアリングの役割を果たす宝石はあまり入ってはおらず、テンプやヒゲゼンマイも不十分で、正確には動きにくい構造をしていたのです。