【懐中時計の構造】懐中時計の外観[片蓋、両蓋、蛇の目]

懐中時計を手にとって、まず目に付くのは文字盤とそこに描かれている数字ですね。
あと、それを指している指針を含めた表側の面です。
腕時計ならばそれだけなのですが、懐中時計の場合には、表を観ても金属の蓋、裏にしてみても金属の蓋という場合があります。
両蓋の懐中時計は、ハンティング・ケースまたはハンター・ケースとも言われています。

懐中時計 ハンターケース

明治時代の日本の紳士たちが愛用したのは、この両蓋の懐中時計でした。両蓋のケースは、竜頭を押すと表蓋が開いてガラスの入った文字盤が現れます。中には竜頭の上が二つに分割されていて、前の半分を押せば表蓋が、後ろの半分を押すと裏蓋が開くという形式もあります。

懐中時計 ハンターケース

これに対して、腕時計のように表蓋がガラスだけに鳴っている形式は、片蓋つまりオープン・フェースと呼ばれるものです。

オープンフェース 懐中時計

両蓋のハンターケースは、ガラスが貴重であった時代に、狩猟をはじめとしてスポーツを楽しむ紳士たちが、文字盤やガラスをいためないための工夫だったのです。

もう一つ、二つの中間の形式といってもいい、厳密には両蓋の変種であるデミ・ハンターあるいはハーフ・ハンターという形式があります。このデミ・ハンターは、両蓋の中心にまるくガラスが入っていて、蓋が閉まっていても指針を見ることもできるし、文字盤の保護にもなります。

懐中時計 デミ・ハンター

ダブル・スペードの針というのがあり、下のように一本の針に二つのスペードがついています。

デミ・ハンターのダブル・スペード針

閉めたままでもスペードが見えるので、長短針の区別がつくのです。このタイプをナポレオン・フェースとも呼ばれています。
戦争のとき、癇癪もちのナポレオンは時計を見るのに、蓋を開けるのを面倒がってナイフで蓋をえぐったからだといわれています。軟らかい金の時計だったのだろうと思います。

ナポレオンが本当にデミ・ハンターの製作者だったかどうかはわかりません。たいがいの軍人はせっかちなので、誰でもやりそうなことではあります。ただ、軍人のことならナポレオンを引き合いに出すと多くの人が納得するから、つくられた話なのかもしれません。
デミハンター 懐中時計

デミ・ハンターはナポレオンの名前がでてくるので、そう古いことではなく、19世紀になってから始まったのだろうと思います。日本では蛇の目ともいわれています。蛇の目傘の模様に似ているからです。日本ではこの呼び方のほうが情緒があって良いかも知れませんね。外国人には通用しませんが。

また、懐中時計は英語でポケット・ウォッチと呼びますが、これはポケットに入れて持ち歩く時計という意味です。日本では明治時代には袂時計(たもとどけい)と呼ばれていました。当時は和服を着る人が多く、着物の袂(たもと)に入れて使ったからでしょう。
政府の統計書でも、初めは袂時計という用語で、懐中時計とかかれるのは、明治三十一年度からになります。