【懐中時計の構造】懐中時計の四つの脱進機

懐中時計の脱進機は、長い年月の間に繰り返し多くの人たちの研究が行われ、今までに工夫された数は300を超えます。
しかし、とりあえず知っておきたいのは次の4つです。

1.クラウン(冠形)あるいはヴァージ脱進機
2.シリンダー脱進機
3.イングリッシュ(英国式)レバー脱進機
4.アンクル脱進機

クラウン(ヴァージ)脱進機

下の絵のようなクラウン(ヴァージ)脱進機は、機械式時計の歴史では最も古くから使われてきました。イギリスの古い懐中時計をみると、地板と受板の間は広く、そのなかに垂直に冠をかぶったような脱進機がすえられています。その後の水平におかれる脱進機とはまったく違っています。せいぜい18世紀までの懐中時計にしかみられないものです。

懐中時計 くさり引き装置とクラウン(ヴァージ)脱進機

シリンダー脱進機

下の絵のようなシリンダー脱進機は、三角形の歯を持つ十五片のガンギが、直接シリンダー内部の削りとられた部分と噛み合ったり離れたりします。その様子は、時計の裏蓋を開けて機械をみればすぐにわかります。19世紀後半にアンクル脱進機に引き継がれるまで、シリンダー脱進機は広く使われ、一つの時代を画することになります。

懐中時計 シリンダー脱進機

ドイツやフランスより、やや遅れて始まったイギリスの時計生産は、18世紀の中ごろには、他の国に劣らないほどの評価を受けるようになりました。そのイギリスでもクラウン脱進機は、18世紀の終わりごろまであって、次にはイングリッシュ・レバー脱進機が採用されます。

イングリッシュ・レバー脱進機

イングリッシュ・レバー脱進機は、1759年にトーマス・マッジが考案したレバー式のものです。爪歯(ラチェット)のついたガンギ車が使われているのが特徴で、ラチェット・ツース脱進機とも呼ばれました。イングリッシュ・レバー脱進機は、イギリスでは広く使われましたが、ヨーロッパ大陸ではそれほど広まらず、むしろシリンダー脱進機の方が一般的でした。

懐中時計 イングレッシュ・レバー脱進機

アンクル脱進機

やがて、シリンダー脱進機がレバー脱進機に移ると、イギリスでもラチェット・ツースはすたれて、スイスを含めてクラブ・ツース・エスケイプメントと呼ばれるレバー脱進機が普通になりました。このレバー脱進機は、下の絵のように錨に似たレバーを使うところから、アンクル脱進機と呼ばれるものです。

懐中時計 アンクル脱進機