【懐中時計の構造】懐中時計の主ゼンマイとヒゲゼンマイ

懐中時計の主ゼンマイ

懐中時計のムーブメントを上から見ると、角孔車(かくあなぐるま)というむき出しになった一番大きな歯車が見えます。

懐中時計の主ゼンマイ

主ゼンマイは、この角孔車の下に香箱(こうばこ)と呼ばれる小さなゼンマイを入れるための箱があり、この中に納まっています。
このため主ゼンマイは、ムーブメントを開けても、通常はお目にかかることができません。

懐中時計の主ゼンマイ

懐中時計のヒゲゼンマイ

懐中時計は、テンプ輪とヒゲゼンマイによって歩度が調節されます。ヒゲゼンマイは、テンプとともにいわゆる振り子の役割を果たすのです。この振り子であるテンプを、左右に振るためのゼンマイがヒゲゼンマイとなります。
ヒゲを長くすればテンプの周期が長くなり、時計と歩度は遅れます。逆にヒゲを短くすれば、周期は小さくなり、歩度は進みます。緩急針はそれを調節する役割りを果たしています。
ヒゲゼンマイには、平ヒゲと巻き上げヒゲ、提灯ヒゲ(上の画像)があります。

平ヒゲ

平ヒゲというのは、ヒゲゼンマイが同一の平面に置かれているもので、平ヒゲでは、ヒゲの運動につれテンプが左右に振れて重心点が移動します。そのため、摩擦度が変わり、振動が変化して正確に時計を進めなくなります。
平ヒゲを使った時計では、一日に1分30秒ほどの姿勢差は避けられないといいます。

懐中時計 平ヒゲ

巻き上げヒゲ

平ヒゲによる姿勢差の問題のために工夫されて作られたのが、巻き上げヒゲです。
A.L.ブレゲの考案は、ヒゲの一端を水平ではなく巻き上げで重心の移動を防ごうとしたものです。巻き上げヒゲがブレゲヒゲといわれるのはそのためなのです。
ブレゲは、こういう考案をして時計の精度化に貢献しましたが、その理論的な裏づけをしたのはエドワード・フィリップという人物です。彼は1860年ごろに、その研究をまとめた論文を発表しています。

懐中時計 巻き上げヒゲ(ブレゲヒゲ)

提灯ヒゲ

そして、巻き上げヒゲの効果を拡大したのが提灯ヒゲです。
E・フィリップは、公開用のクロノメーターに使われる提灯ヒゲについても論じています。簡単に言えば、巻き上げヒゲの効用を最大にするために、ヒゲゼンマイの全体を巻き上げたもので、小田原提灯を引き伸ばしたような形になります。マリン・クロノメーターやポケット・クロノメーターには、提灯ヒゲとクロノメーター脱進機が使われています。

懐中時計 提灯ヒゲ