【さまざまな懐中時計】鉄道懐中時計

鉄道懐中時計 モンゴメリダイアル

鉄道に正確な時計が必要なのは今では常識とされています。
しかし、鉄道事業の初めのころには、家庭で使わなくなった置時計を持って乗務する人や、服を買った際におまけとしてついてくる使い捨ての時計を持ってくる人もいたそうです。

1891年4月19日、アメリカのオハイオ州キプトンの近くで、湖岸ミシガン南部鉄道の上下線の列車が正面衝突し、11名の死傷者を出しました。機関士の時計が4分遅れていたのが原因といわれています。

この大きな事故のあと、1893年にアメリカの鉄道会社は、社外の専門家に依頼して、鉄道時計の規準を作ってもらいました。その結果、17石以上の多石入り、5姿勢調整、片蓋、アラビア数字、16サイズ以上の大型、週当たりの誤差は1分以内など、当時としては大変厳しい規準が決められました。

時計メーカーは、この規準を超える時計を作れば、鉄道会社の大口受注が可能になるので、競って開発に努めました。その結果、アメリカの懐中時計は全体として精度を高めることになりました。鉄道懐中時計のメーカーとして有名なのは、ウォルサム(WALTHAM)、エルジン(ELGIN)、ハミルトン(HAMILTON)、イリノイ(ILLINOIS)、ハンプデン(HAMPDEN)、サウスベンド(South Bend)、ボール(BALL)などがあげられます。

日本では、精工舎が1929年(昭和4年)にセイコーシャ19型を作り、鉄道懐中時計として国鉄に採用されました。
7石入りで精度はアメリカの規準を大きく下回っていました。もっとも、精工舎の時計の中では精度の良い方で、第二次世界大戦中の日本の軍用時計は大部分が鉄道時計をベースにしています。

アメリカで最初に鉄道懐中時計の規準を決めたのは、W.C.ボールです。ボールは時計商でありメーカーではありませんでした。ボールの規準に従って多くのメーカーが鉄道懐中時計を作りましたが、彼もボールの名前を入れた時計をメーカーに作らせています。
それが、下の写真の懐中時計です。

ボール BALL 鉄道懐中時計

ボール BALL 鉄道懐中時計

ボール(BALL)社のコマーシャル・スタンダードの鉄道懐中時計です。
17石、竜頭巻きで16サイズ。直径5.0cm。

ウォルサム WALTHAM 鉄道懐中時計

ウォルサム WALTHAM 鉄道懐中時計

ウォルサム WALTHAM 鉄道懐中時計

ウォルサム(WALTHAM)社のリバーサイド(River Side)の鉄道懐中時計です。
16サイズ、21石入り、ねじり蓋、金張り。直径5.0cm、重さ100g。
リバーサイドはウォルサムの中でも最高級品としての位置付けです。
アメリカの鉄道懐中時計の質の高さを示すものです。

サウスベンド South Bend 鉄道懐中時計

サウスベンド South Bend 鉄道懐中時計

サウスベンド South Bend 鉄道懐中時計

1911年、サウスベンド(South Bend)社製、金張り、3姿勢調整の鉄道懐中時計。
16サイズ、17石入り、片蓋。ダブル・ローラー脱進機があります。
グレイド227は鉄道用の懐中時計です。直径5.0cm。
サウスベンド(South Bend)社は、1902年開業でアメリカでは新しいほうの会社ですが、創業の翌年には鉄道懐中時計を作り始めています。技術には自信があったものと思われます。
30年以上も続いた、アメリカでは有名な時計メーカーの一つですが、日本ではその製品をあまり見かけません。

ハンプデン HAMPDEN 鉄道懐中時計

ハンプデン HAMPDEN 鉄道懐中時計

ハンプデン HAMPDEN 鉄道懐中時計

1883年、ハンプデン(HAMPDEN)社製、金張り、出テンプ、チラネジの鉄道懐中時計です。
ローマ数字、18サイズ、10石入り。直径5.8cm。
鉄道時計の規準ができる以前の鉄道懐中時計です。
裏蓋に機関車の金象嵌があります。
ハンプデン(HAMPDEN)社は、1885年創業の古い工場ですが、1919年にロシアに施設や部品などを一括して売却し事業を終えています。

ハミルトン HAMILTON 鉄道懐中時計

ハミルトン HAMILTON 鉄道懐中時計

1913年、ハミルトン(HAMILTON)社製、金張り、5姿勢調整の鉄道懐中時計です。
ダブル・ローラー脱進機が使われ、16サイズ、ねじり蓋の典型的な鉄道時計です。
直径5.0cm。

イリノイ ILLINOIS 鉄道懐中時計

イリノイ ILLINOIS 鉄道懐中時計

イリノイ ILLINOIS 鉄道懐中時計

1923年、イリノイ(ILLINOIS)社製、ニッケル側の鉄道懐中時計です。
剣引き剣まわし、16サイズ、ねじり蓋でケースはキーストーン社製です。
アメリカの懐中時計は、機械とケースのメーカーが違うのが普通です。
イリノイ(ILLINOIS)社は、1885年に創業し、しばしば社名を変えましたが、1927年にハミルトン(HAMILTON)社に合併して、事業を終えています。

精工舎 セイコーシャ 鉄道懐中時計

精工舎 セイコーシャ 鉄道懐中時計

精工舎 セイコーシャ 鉄道懐中時計

1929年(昭和4年)、精工舎社製の鉄道懐中時計です。
いわゆるセイコーシャ19型といわれる時計です。7石入り。直径5.0cm。
精工舎の鉄道時計は、初期の文字盤には“SEIKOSHA”とだけ書かれていました。
“プレシジョン(PRECISION)”という文字が入るのは戦後になってからのことで、そのあと“セコンド・セッティング(SECOND SETTING)”、続いて“ダイアフレックス(DIAFLEX)”という文字が入りました。

精工舎 セイコーシャ レイルウェイ

1931年(昭和6年)年ごろの、精工舎社製のセイコーシャ・レイルウェイと呼ばれる鉄道懐中時計です。
「ローレット縁、変わり鋲」と言われている鉄道時計です。
機械はオリジナルと同じですが、ケースに飾りがついていて、文字盤に“RAILWAY WATCH”
の文字が入っています。
直径5.2cm。

精工舎 セイコーシャ オリジナル19型

精工舎 セイコーシャ オリジナル19型

1942年(昭和17年)、精工舎社製の“セイコーシャ オリジナル19型”と呼ばれる鉄道懐中時計です。
“昭和拾七年 華中鉄道 No.812”の刻印が入っています。
真鍮または金メッキ製と思われます。
金メッキ側の懐中時計は、日本ではほとんど見かけません。